学習院院歌の解
2010年06月08日
学習院院歌の解
院長 安倍 能成私は今年の、皇太子様の御誕生日と同じ日の12月23日で、ちょうど満68歳になる。殿下より精確に50歳上である。私はこれまでに文章は大分書き、和歌も俳句も少しは作ったが、こんな院歌のようなものを作ったのは、生まれて初めてである。詞はまずいけれども、私はこの院歌を、日本国民全体にもうたってもらいたいくらいの意気込みで、作ったのである。
1 西洋の神話に、フェニックスという鳥があって、500年ごとに、もえる火の中で焼け死んで、また生きかえるという。不死鳥というのはその鳥のことで、世界は絶えず生き返り死に返り変わってゆくが、その中に死なぬ生命があるという意味である。「もゆる火の火中」という文句は、「古事記」という古い本にある弟橘姫の御歌から拝借したので、委しいことは先生にきいてもらいたい。戦争で学習院は焼け、敗戦後皇室の御保護を離れて私立学校になったが、その焼け跡の上に、先生と生徒と力を合わせて、新しい学習院を作りあげてゆこう。
2 花は、咲くがまた色あせて萎むものである。学習院もこの盛衰はのがれにくい。ただ長い歴史の間に養って来た名誉ある学風と精神とを基にして、わるいことはどしどし改め、広く世界のことを眼の中に入れて、狭く独りよがりにならず、現実(世の中)の醜さや苦しさに負けないで生きぬいてゆこう。
3 日本も世界の三大強国だとか五大強国だとか威張った時があった。学習院も校舎も立派で豊かな時もあったが、昔はよかった、よかった、と嘆いて居てはいけない。荒浪が狂っても、黒雲がゆくさきを閉ざしても、みんなの胸に希望のラッパを高く鳴らして、屈せず進め。
4 人はみんな外の人にない命、即ち個性を天から与えられて居り、全く取り柄のない人間はない。頭がわるい、身体が弱いといって失望せずに、自分の個性を育て鍛えて、めいめい自分を養い、さてこの力をみんなして世の為、社会の為に捧げよう。まことと平和とを永久の光導きと仰いで。
解らぬことは先生方にきいてもらいたい。(昭和26年11月18日)
※ 初等科の学校文集「小ざくら」を開いていたら、安倍先生が意気込みを綴った「学習院院歌の解」に出合いました。学習院院歌は、今日でも学習院で歌い継がれております。この安倍先生の思いをみなさんに紹介することは意義のあることと思い、ここに掲載します。

