どちらが多い?
2011年06月05日
林檎が3個、苺が5個描いてある図を黒板に掲示します。
「どちらが多いですか。」
と問いかけました。初等科生活が始まってまもないころ、私が主管をしていたときの1年生です。
A子が答えます。
「りんごは3こ、いちごは5こなので、いちごがおおいです。」……①
ある日のこと、窓から校庭を見ると、上級生がまっすぐに並んで座っています。聞いてみました。
「男の子、女の子、どちらが多いですか。」
ほとんどの子供たちが数え始めました。なかなか数えきれません。でも、B男は、数えているようには見えないのに、分かったようです。聞いてみると、
「女の子がおおい。」
とのことです。わけを聞くと、
「ならんでいるから。」……②
と言うのです。
しばらくしたある日のこと、中休みに校庭で遊んでいる子供は、どちらが多いだろうか、と聞いてみました。当然のことながら大きな数は未習なので、分からない、とにべもない返答です。そこで、
「男の子と女の子、どちらが多いか、どのようにして調べますか。」
と問いかけました。
数えきれない、たいへんだ、めんどうである、ごちゃごちゃしている、……。
「手をつなぐと……。」……③
とC子が言いかけました。
「(Cさんの考えが)分かる?」
とほかの児童に聞いてみると、だれも自信なさそうです。
「だれかCさんの考えを説明してみませんか。」
と言うと、友達のD子が、
「男の子と女の子が手をつなぐと、
(多いか少ないかが)わかります。
(手をつなぐ相手が)いないほうがおおいのです。」
と説明しました。
「(ほかの児童に)いまの説明で分かった?」
と聞くと、頷いています。
「(Cさんに)いまの説明でいい?」
と聞くと、しっかりと頷きました。
ここで①②③の考えを考察してみます。
①は数詞を使って考えています。自分が分かっている数詞までしか数えられません。
②は前後左右きちっと整列しているときは、列の長さで人数の多少を比べることができます。
③は手をつなぐことによって(握手をすることによって)数学用語の「1対1」対応が保証され、問題が解決されます。
①と②も「1対1」対応が保証されているときに成立することは言うまでもありません。
1年生の授業1時間で、この3つの考えを理解しなければならないということはありませんが、いずれ気づいてほしい事柄です。
三浦 芳雄