3年生 カイコの学習(観察と飼育)
初等科では3年生の理科「こん虫のからだのつくり」の学習の一環として,毎年6月~7月にかけてカイコを育てています。
この学習では,飼育観察を通して,命の営みの神秘や不思議さに気付かせるとともに,独特の生活を営む昆虫という生きものについての理解を深めることを第一のねらいとしています。
■学校での飼育観察
観察は,卵の孵化から始めます。孵化した幼虫は,餌をたくさん食べてどんどん成長し,脱皮を繰り返しながら巨大化していきます。
その様子にはじめは怖がっていた子も,お世話をしていくうちにしだいに愛着がわき,触れるようになっていきます。
幼虫は,成熟すると糸をはいて繭を作ります。そこで,3年生教室前のオープンスペースに「まぶし」を設置して,全員で観察できるようにしています。
幼虫は繭の中で脱皮して蛹に変身し,次に成虫に変身するための準備を整えます。そして,およそ2週間後に脱皮して,成虫となって外に出てきます。
大切に育ててきた幼虫がどのような姿で繭から出てくるのか,子どもたちは,楽しみにしながら今日もお世話に励んでいます。
■家庭での飼育観察
学校での飼育観察と並行して,子どもたちは,幼虫がある程度成長したところで自宅に持ち帰り,自分でお世話をします。餌となる桑の葉は,近光園にある桑の木から休み時間につみ取って持ち帰ります。
やがて,幼虫が糸をはいて繭を作り,しばらくたってから繭に穴を開けて成虫としてはい出してきて,雄と雌が出そろうと交尾し,そして,雌がたくさんの数の産卵をする。こうして命をつないだ後,雄も雌も力つきて死んでいく。このように昆虫の一生を目の当たりにすることになります。
■人とカイコのつながり
養蚕は古代に始まり今日に至るまでの長い歴史を持ち,現代の私たちも様々な絹製品を利用して,その恩恵を受けています。
近代日本においては国を支える重要な産業の一つでもありましたが,化学繊維の発明や工業の発達により次第に衰退の一途をたどりました。それでもなお,絹の良さは色あせることがありません。バイオテクノロジーの一つとして新たな展望が開け,伝統工芸としての良さも再認識されています。
また,ご皇室の方々が日本の伝統文化継承のために,毎年養蚕に取り組まれていますが,伝統的品種の養蚕が天平時代の国宝の復元にも結び付くなど,様々な可能性があることにも驚かされます。
■第二のねらい
このように,カイコは,絹という上質な繊維をつくることから,古くから人々に大切に育てられ,愛され,歴史文化伝統とも深いつながりのある生き物です。
カイコのこのような面にも目を向けさせることで,虫に対する恐怖心や偏見を取り除くとともに,命の尊さを感じ,大切に思う心を育むことを第二のねらいとしています。