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科長ブログテスト

桜も初等科生も、この時期が大切

2009年01月30日

 寒い日が続きますが、如何お過ごしでしょうか。昨日の父母会総会にはたくさんの父母の皆様にご参会戴き、誠にありがとうございました。川嶋優先生のご講演、「まず教えよう」からは、親や教師の子供への接し方について、たくさんのことを学ぶことができました。先生には改めて御礼を申し上げます。
 今回は、1月29日の朝礼でのお話を配信いたします。

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 先週の火曜日の1月20日は暦の上で大寒でした。そして来週の水曜日の2月4日は立春になります。大寒から立春の間が1年の中でいちばん寒い時期に当たるといわれています。またこの時期が、例年、風邪やインフルエンザが最もはやる時期です。

 こうした寒い時期にも、春の訪れが少しずつ感じられます。先週の週末に近所を散歩していた時、今年になって初めて開花しているタンポポを見つけました。また陽だまりには、小さな青い花のオオイヌノフグリが咲いているのを見つけました。桜の木の枝には、小さな花芽がたくさんついています。

 桜の花がきれいに咲くためには、この時期の寒さとそれに続く暖かさが必要です。桜の木は、花を散らせると、6月頃に次の年に向けて花芽をつけ始め、秋になると葉を落として休みと眠りに入ります。これを「休眠」といいます。休眠の間に、花がたくさんつくように、栄養を蓄えます。休眠から覚めるようにと促すのが、1月から2月にかけての寒さです。寒さによって休眠から覚まされたところに、2月から3月にかけての暖かい日が続くと、花の開花が始まります。桜が4月にきれいな花をつけるためには、1月から2月にかけての寒さと、2月から3月にかけての暖かさを経験しなければなりません。1月から3月にかけての寒さと暖かさは、桜が4月にきれいに開花する上で大切な役割を果たしています。

桜の花芽.jpg


 みなさんは4月になると1学年ずつ進級します。6年生は中等科へ進学します。みなさんが4月に進級して立派な花を咲かせるためには、この3学期の過ごし方が大切です。みなさんにとっても、桜と同様に、この1月から3月にかけて大切に過ごすことが必要です。3学期は短いですが、4月にきれいな花を咲かせるように、大切に過ごすようにしましょう。

中島 平三

駅伝に見る礼儀正しさ

2009年01月08日

 新年明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します。
 国内外の経済状況は決して明るいものではございませんが、そうした時であるからこそ、子供たちには将来への力をしっかりと身に付けさせ、将来への夢や希望を育むような教育を行って参りたいと思います。
 今回は、1月8日に行われました3学期始業式における話をお届け致します。

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 平成21年の新しい年が始まりました。新しい年が始まるに当たり、今年の目標を立てたり、新たな夢や希望を考えたりした人も、たくさんいることと思います。私は、学校が平穏で、皆さんが落ち着いた雰囲気の中で、楽しく学べることを願っています。

 1月の「今月のめあて」は「礼儀正しく」です。今日は、冬休みの間に、学習院関係者の礼儀正しい姿に接して大変清々しい思いをしたことについて、お話ししようと思います。

 正月恒例の東京箱根間往復大学駅伝競走が1月2日、3日に行われました。この駅伝大会には、一昨年に続き、学習院大学・陸上部の川内優輝さんが、関東学連選抜チームの一員として参加しました。学連選抜チームというのは、1つの大学で単独チームを組めない場合に、いろいろな大学から選手が集まって組むチームです。川内選手は、学連選抜チームの第6区の走者、2日目復路の第1走者として、芦ノ湖畔から小田原に向かう急な下り坂を走りました。結果は第6区を走った23人の中で、3番目の良いタイムで走り、チームの順位を引き上げるのに大きく貢献しました。学連選抜チームは総合で9位、復路だけですと3位という立派な成績を残しました。

 私が感心したのは、川内選手のタイムが立派であったこと以上に、スタートを切る直前に、ほんの一瞬テレビの画面に映し出された時の光景です。2日目の第1走者は、スタートを切る前に、チームごとに名前を呼ばれ、ゼッケンと襷(たすき)のチェックを受けます。大会の審判員の方にチェックをして頂くと、川内選手は2度ほどにこやかにお辞儀をして、お礼の気持ちを表していました。この光景を見て、私は大変清々しくまた誇らしい気持ちになりました。新年の挨拶に来ていた親戚の人もそのテレビの光景を見ていて、思わず、「さすがに学習院の学生は礼儀正しい」とつぶやき、感心していました。

 駅伝大会を運営するに当たり、多くの人が協力してくれています。そうした協力があってはじめて、選手たちは競技に専念することができます。選手がそのことを忘れずに、感謝の気持ちを表すのは、当然と言えば当然かもしれません。川内選手は、2学期の終業式で話した、「当たり前のことを当たり前に行う」ことができたのです。そのことが、見ている人たちに大変爽やかな感銘を与えたのです。

 学習院初等科が開校してすぐの明治12年(今からちょうど130年前)に定められた「学習院学制」という学校の決まりの中に、「本院ノ生徒ハ殊ニ行状方正心術誠実ニシテ世間ノ規範トナルヲ要シ」と定められています。学習院に学ぶ児童や生徒・学生は、特に礼儀や行儀を正しくし、心構えを誠実にして、社会の手本となるように努める必要がある、という意味です。この考えは、学習院に学ぶ者にとっていつの時代においても大切なことです。川内選手の何気ないしぐさがテレビの画面を通じて多くの人の目にとまったと同じように、みなさんの行動や行いが通学路や電車の中で多くの人の目にとまっているかもしれません。常日頃から、行儀や礼儀をきちんと、当たり前のように行えるよう心掛けることにしましょう。

 3学期は今年度最後の学期になります。特に6年生にとっては初等科生活最後の学期になります。礼儀正しく、そして学校全体が静かな落ち着いた雰囲気の中で、楽しく学べるように一人ひとり努力するようにしましょう。

中島 平三

「当たり前」が引き寄せた「神宮の奇跡」

2008年12月23日

 初等科では12月22日に平成20年度2学期の終業式が行われました。暦などの関係で、例年よりも幾分早目の終業式でした。今回は、終業式におけるお話をお送りします。
 皆様にとりまして、この1年間は如何だったでしょうか。初等科では、初の学校説明会開催や、登下校安全確認システムの導入、そして「初等科NEWS」や「科長ブログ」の配信開始など、活発な動きがありました。児童たちも、新しくなった校庭の遊具やバスケットボールコートで元気に遊んでいます。1年間ご支援・ご協力を戴き、厚く御礼を申し上げます。どうぞ、良いお年をお迎えください。

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 今日で2学期が終了し、同時に平成20年の初等科での生活が終わります。平成20年が終わるに当たり、各自この1年を省みることにしましょう。
 その際、学校や家庭における「基本的なこと」をきちんと行うことができたか、ということから振り返ってみるとよいと思います。学校で静かに授業を受けることができたでしょうか。授業中に自分で理解するように努力したでしょうか。お友だちに意地悪などしなかったでしょうか。家では夜更かしなどせずに規則正しい生活を送ることができたでしょうか。
 これらはあまりにも当たり前の事なので、改めて反省するまでもないと思われるかもしれませんが、基本的なことがしっかりとできていなければ、いくら難しいことや大変なことをやろうとしても空回りに終わってしまいます。当たり前の事を当たり前に行えることが何よりも大切です。当たり前に行えるというのは、人に言われなくても自分から行えるということです。

 今日は、この「当たり前の事を当たり前に行う」ことの大切さを教えてくれている1冊の本を紹介しようと思います。本の名前は『神宮の奇跡』、学生野球が行われる神宮球場で奇跡が起きた、というものです。この本の表紙のGのマークは、野球部のみなさんにはお馴染みですね。学習院の野球部のユニフォームは、初等科から大学まですべて同じです。この本は、学習院大学の野球部が今からちょうど50年前に、東都大学の1部リーグ(いちばん強い大学が所属しているグループ)において見事に優勝した時の様子を描いたものです。その時のチームには、主力選手として活躍していた初等科の卒業生もいました。東都大学の1部で学習院大学が優勝したのは、この時が最初にして最後でした。その後一度もありません。
 その年の秋シーズンでは、学習院を含めた3つの大学が同じ勝率で首位に並びます。3つの大学の間で総当りの決勝戦を行いますが、どの大学も1勝1敗になり勝負がつきません。もう一度総当りの決勝戦を行いますが、再び1勝1敗になり依然として優勝が決まりません。そこで、このシーズンは「優勝をお預けにしよう」という提案が2つの大学から出されます。しかし学習院は、「もう一度だけ決勝戦をしましょう」と提案し、それがようやく認められて3度目の決勝戦が行われます。既に11月も下旬になり、手がかじかむような寒さになっていました。決勝戦には初等科の児童も学校を挙げて応援にかけつけ、熱い声援を送りました。熱戦のすえ学習院が2勝をあげ、ようやく決着がつきます。この本の中の表現を借りれば、「信じられないことだが、本当に学習院が優勝してしまったのである。それは、奇跡としかいいようのない番狂わせだった。」というくらいのたいへんな出来事だったのです。
この本の著者は、その当時のことを次のように振り返っています。


「言うまでもなく、学習院大学は、野球の名門大学ではありません。有名な高校球児など一人も入ってこない学校です。
 では、そのような学校がなぜ優勝できたのでしょうか。それは、特別なことは何もありません。ただ、ひとつのプレーをおろそかにしない、相手が強大であってもこつこつと戦いを挑んでいく、どんなに劣勢になろうが絶対にあきらめない---そんな当たり前のことを彼らがやってのけたからに過ぎません。」

 スポーツをやる人たちにとって、「ひとつひとつのプレーをおろそかにしない」とか、「こつこつと戦いを挑んでいく」、「絶対にあきらめない」などということは、基本的なことです。その基本的なことを一人ひとりが当たり前のようにやったことが、結果として奇跡を起こしたのです。この学習院大学の優勝は、当たり前の事を当たり前に実践することがいかに大切であるかを教えてくれています。

 みなさんが1年を振り返るに当たり、最初に言いましたように、授業を静かに受けることができたか、お友達と仲良くすることができたか、規則正しい生活を送ることができたか、などということを反省してみましょう。 こうしたことは小学生として当たり前の事です。そうしたことを自分から当たり前に行うことができたでしょうか。当たり前の事を当たり前にできるようになることが、何よりも大切です。
 それでは、冬休みの間、健康に気をつけて、有意義に過ごしてください。1月8日に元気な姿でお会いしましょう。

中島 平三

「育てる教育」、「育つ教育」

2008年12月10日

 この12月より、本科のホームページで、「科長ブログ」を発信開始することになりました。学校の様子や、朝礼や式などでの話、随想や雑感などを、随時お伝えしていきたいと思います。学習院初等科では、施設や制度などのいわばハード面における教育改革に引き続き、「教育の質的向上」と「広報活動の推進」を目指してソフト面における教育改革を推し進めています。「科長ブログ」および同時に開始する「初等科NEWS」は、「広報活動の推進」の一環として、広報委員会が中心となり準備を進めてきたものです。
 第1回目は、日頃考えている教育や学校のあり方についての雑感をお伝えしたいと思います。

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 教育は、教師が子供を「教え、育てる」と理解するのがもっとも一般的です。しかし子供には、ちょうど花の種子に光や水を与えると自然に開花するように、自ら育つ力があります。その面に注目するならば、学校や教師は、光や水のように、子供が自ら育つのを手助けしたり、きっかけを与えたりする役割を担うことになります。教育の「育」には、「育てる」という他動的な意味とともに、「育つ」という自動的な意味があるのは、教育に「育てる教育」と「育つ教育」の両方があることと関係しているように思えます。

 初等教育の段階では「育てる教育」が大きな比重を占めますが、上級学校に進学するにつれて「育つ教育」の重要性が増してきます。人間の生来的な能力や、教育で教えられることの有限性などのことを考えますと、初等教育においても、「育つ教育」を視野に入れ、子供たちにその姿勢を育む必要があります。

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「育てる教育」でも「育つ教育」でも、教えたり、きっかけを与えたりするのは、まず教師です。友達同士で教え合い、学び合うということもあります。人ばかりではなく、教材、施設、設備なども教える上で重要な役割を担います。さらに教える場の立地や雰囲気も大切です。これらをまとめて教育環境と呼ぶならば、教育環境全体でもって、子供を育てたり、子供が育つのを手助けしたりすることになります。教育環境が恵まれていることは、質の高い教育を行い、豊かな教育効果を上げるために極めて重要です。学校には、教員・友達・施設・設備・立地・雰囲気などあらゆる面の教育環境を整えていくことが求められます。

 これらの教育環境は、現時点で充実が求められる「横軸」の要件です。教育環境には、さらに、時間の経緯の中で積み重ねられる歴史や伝統という「縦軸」の要件があります。「縦軸」の要件も、今日の教育実践に息づいているならば、教育環境の重要な一部となります。

「育てる教育」でも「育つ教育」でも教える内容は、知識はもちろんのこと、運動や芸術の技能や感性、徳性、健康や体力など多岐にわたります。子供の健やかな成長には、知・情・意・徳・体がバランスよく豊かに発達していくことが肝要です。

 学習院初等科では、児童がバランスよく育つよう、また育てることができるように、あらゆる面の教育環境の充実に努めてきています。平成19年からの全学年1クラス33名の少人数体制、新校舎竣工、校庭改修などの制度や施設を実現しましたが、そのあとも、本館教室の改修、安全な遊具への更新、登下校安全確認システムの導入、副教材の作成などに取り組んでいます。また教員の質の向上や教育内容の充実を目指して、研修活動も活発化しています。

 130年以上に及ぶ初等科の伝統は、洗練された雰囲気を醸し出し、また今なお随所に実践として息づいています。游泳教育は明治13年(1880年)に始まり、現在も6年生を対象とした沼津海浜教育に受け継がれています。沼津海浜教育を中心とした初等科の特色ある水泳教育は、東京都の平成20年度教育改革推進モデル事業に選ばれました。明治15年(1882年)に始まった英語教育はわが国でも屈指の長い歴史を誇り、小学校英語の先駆的な役割を果たしてきています。

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 今後も、「育てる教育」「育つ教育」の両方における更なる質の向上を目指して、あらゆる面の教育環境、教育内容の充実に努めて参る所存です。

中島 平三