梅の季節に沼津海浜教育の意義を考える
2009年02月22日
昨年12月発行の「初等科だより」(229号)で報告しましたように、東京都の「平成20年度教育改革推進モデル事業」に申請していた初等科の「特色ある水泳教育」が、同事業の1つに選定されました。このモデル事業は、特色ある教育を進めている私立学校をモデル校に指定し、教育改革の推進を図ろうとするものです。初等科の学校及び沼津で行っている、着衣泳、日本泳法、沖合での距離泳、和船の操舵などの独自の水泳教育が、高く評価されたと言えます。
梅花の季節に夏の海のことを語るのはやや季節外れの感がないでもありませんが、来年度の沼津海浜教育が動き始める前に、改めてその意義、特に特別活動としての意義について考えておきたいと思います。このことを考えるきっかけとなりましたのは、昨年度の沼津海浜教育の反省会で、游泳会助手のお一人から日本特別活動学会での発表の様子を伺ったことです。
文部科学省の学習指導要領によれば、「特別活動」の目標として、心身の調和のとれた発達や、集団の一員としての自覚、協力する態度、自主性などの育成を促すことが挙げられています。
特に校外学習のように宿泊を伴う行事では、本物の自然や文化を体験して、集団生活の仕方を身につけたり、公衆道徳を守る姿勢を育んだりすることが期待されています。また実施するに当たって、異なった年代の人との交流など色々なグループの人と触れ合う機会となることが望まれています。
さて沼津海浜教育はどうでしょうか。5日間の水泳練習や距離泳の挑戦で心身ともに鍛えられます。寝食をみんなで一緒にしたり、班行動をしたりすることにより、集団行動の大切さや、集団の中で協力したり自分で考えて行動したりしなければならないことなどを学びます。
海は、日によって潮の流れも、水温も、波の様子も異なります。本物の自然と向き合うことは危険を伴いますが、海浜教育では、そうした自然を相手にしながら安全に行事が行えるように、たくさんの助手の方が手伝って下さっています。
また沼津での水泳は伝統的な日本泳法が基本であり、和船に乗ったり操作したりする練習もします。宿泊する施設は明治以来の日本式の家屋であり、そこで畳(たたみ)や蚊帳(かや)の生活を体験します。日本の伝統的な文化や生活を体験する絶好の機会です。
手伝って下さる助手の方には、大学生から社会人までいろいろな世代の方がいます。年齢も、職業も、生活している場所もさまざまです。游泳場の中での生活ですが、いろいろなグループの人と接することになります。普段の学校生活とは異なり、学外の人と一緒に生活しますから、公共のルールを守らなければなりません。
このように沼津海浜教育は、特別活動に求められているいろいろな要件を満たしており、特別活動の理想像と言っても過言ではありません。学会発表を終えて、「これだけの質の高い行事が実在することを知り感動した」といった趣旨の称賛が、多くの聴衆から寄せられたそうです。
沼津海浜教育は、学習院にとっても、初等科にとっても、大切にしたい宝物です。それを続けていけるのも、游泳会の助手のみなさんの献身的な協力や支援のお陰であることを忘れてはなりません。海浜教育の意義を再認識して、新たな気持ちで新年度の海浜教育の準備に取りかかりたいと思います。