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科長ブログテスト

「育てる教育」、「育つ教育」

2008年12月10日

 この12月より、本科のホームページで、「科長ブログ」を発信開始することになりました。学校の様子や、朝礼や式などでの話、随想や雑感などを、随時お伝えしていきたいと思います。学習院初等科では、施設や制度などのいわばハード面における教育改革に引き続き、「教育の質的向上」と「広報活動の推進」を目指してソフト面における教育改革を推し進めています。「科長ブログ」および同時に開始する「初等科NEWS」は、「広報活動の推進」の一環として、広報委員会が中心となり準備を進めてきたものです。
 第1回目は、日頃考えている教育や学校のあり方についての雑感をお伝えしたいと思います。

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 教育は、教師が子供を「教え、育てる」と理解するのがもっとも一般的です。しかし子供には、ちょうど花の種子に光や水を与えると自然に開花するように、自ら育つ力があります。その面に注目するならば、学校や教師は、光や水のように、子供が自ら育つのを手助けしたり、きっかけを与えたりする役割を担うことになります。教育の「育」には、「育てる」という他動的な意味とともに、「育つ」という自動的な意味があるのは、教育に「育てる教育」と「育つ教育」の両方があることと関係しているように思えます。

 初等教育の段階では「育てる教育」が大きな比重を占めますが、上級学校に進学するにつれて「育つ教育」の重要性が増してきます。人間の生来的な能力や、教育で教えられることの有限性などのことを考えますと、初等教育においても、「育つ教育」を視野に入れ、子供たちにその姿勢を育む必要があります。

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「育てる教育」でも「育つ教育」でも、教えたり、きっかけを与えたりするのは、まず教師です。友達同士で教え合い、学び合うということもあります。人ばかりではなく、教材、施設、設備なども教える上で重要な役割を担います。さらに教える場の立地や雰囲気も大切です。これらをまとめて教育環境と呼ぶならば、教育環境全体でもって、子供を育てたり、子供が育つのを手助けしたりすることになります。教育環境が恵まれていることは、質の高い教育を行い、豊かな教育効果を上げるために極めて重要です。学校には、教員・友達・施設・設備・立地・雰囲気などあらゆる面の教育環境を整えていくことが求められます。

 これらの教育環境は、現時点で充実が求められる「横軸」の要件です。教育環境には、さらに、時間の経緯の中で積み重ねられる歴史や伝統という「縦軸」の要件があります。「縦軸」の要件も、今日の教育実践に息づいているならば、教育環境の重要な一部となります。

「育てる教育」でも「育つ教育」でも教える内容は、知識はもちろんのこと、運動や芸術の技能や感性、徳性、健康や体力など多岐にわたります。子供の健やかな成長には、知・情・意・徳・体がバランスよく豊かに発達していくことが肝要です。

 学習院初等科では、児童がバランスよく育つよう、また育てることができるように、あらゆる面の教育環境の充実に努めてきています。平成19年からの全学年1クラス33名の少人数体制、新校舎竣工、校庭改修などの制度や施設を実現しましたが、そのあとも、本館教室の改修、安全な遊具への更新、登下校安全確認システムの導入、副教材の作成などに取り組んでいます。また教員の質の向上や教育内容の充実を目指して、研修活動も活発化しています。

 130年以上に及ぶ初等科の伝統は、洗練された雰囲気を醸し出し、また今なお随所に実践として息づいています。游泳教育は明治13年(1880年)に始まり、現在も6年生を対象とした沼津海浜教育に受け継がれています。沼津海浜教育を中心とした初等科の特色ある水泳教育は、東京都の平成20年度教育改革推進モデル事業に選ばれました。明治15年(1882年)に始まった英語教育はわが国でも屈指の長い歴史を誇り、小学校英語の先駆的な役割を果たしてきています。

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 今後も、「育てる教育」「育つ教育」の両方における更なる質の向上を目指して、あらゆる面の教育環境、教育内容の充実に努めて参る所存です。

中島 平三