「当たり前」が引き寄せた「神宮の奇跡」
2008年12月23日
初等科では12月22日に平成20年度2学期の終業式が行われました。暦などの関係で、例年よりも幾分早目の終業式でした。今回は、終業式におけるお話をお送りします。
皆様にとりまして、この1年間は如何だったでしょうか。初等科では、初の学校説明会開催や、登下校安全確認システムの導入、そして「初等科NEWS」や「科長ブログ」の配信開始など、活発な動きがありました。児童たちも、新しくなった校庭の遊具やバスケットボールコートで元気に遊んでいます。1年間ご支援・ご協力を戴き、厚く御礼を申し上げます。どうぞ、良いお年をお迎えください。
今日で2学期が終了し、同時に平成20年の初等科での生活が終わります。平成20年が終わるに当たり、各自この1年を省みることにしましょう。
その際、学校や家庭における「基本的なこと」をきちんと行うことができたか、ということから振り返ってみるとよいと思います。学校で静かに授業を受けることができたでしょうか。授業中に自分で理解するように努力したでしょうか。お友だちに意地悪などしなかったでしょうか。家では夜更かしなどせずに規則正しい生活を送ることができたでしょうか。
これらはあまりにも当たり前の事なので、改めて反省するまでもないと思われるかもしれませんが、基本的なことがしっかりとできていなければ、いくら難しいことや大変なことをやろうとしても空回りに終わってしまいます。当たり前の事を当たり前に行えることが何よりも大切です。当たり前に行えるというのは、人に言われなくても自分から行えるということです。
今日は、この「当たり前の事を当たり前に行う」ことの大切さを教えてくれている1冊の本を紹介しようと思います。本の名前は『神宮の奇跡』、学生野球が行われる神宮球場で奇跡が起きた、というものです。この本の表紙のGのマークは、野球部のみなさんにはお馴染みですね。学習院の野球部のユニフォームは、初等科から大学まですべて同じです。この本は、学習院大学の野球部が今からちょうど50年前に、東都大学の1部リーグ(いちばん強い大学が所属しているグループ)において見事に優勝した時の様子を描いたものです。その時のチームには、主力選手として活躍していた初等科の卒業生もいました。東都大学の1部で学習院大学が優勝したのは、この時が最初にして最後でした。その後一度もありません。
その年の秋シーズンでは、学習院を含めた3つの大学が同じ勝率で首位に並びます。3つの大学の間で総当りの決勝戦を行いますが、どの大学も1勝1敗になり勝負がつきません。もう一度総当りの決勝戦を行いますが、再び1勝1敗になり依然として優勝が決まりません。そこで、このシーズンは「優勝をお預けにしよう」という提案が2つの大学から出されます。しかし学習院は、「もう一度だけ決勝戦をしましょう」と提案し、それがようやく認められて3度目の決勝戦が行われます。既に11月も下旬になり、手がかじかむような寒さになっていました。決勝戦には初等科の児童も学校を挙げて応援にかけつけ、熱い声援を送りました。熱戦のすえ学習院が2勝をあげ、ようやく決着がつきます。この本の中の表現を借りれば、「信じられないことだが、本当に学習院が優勝してしまったのである。それは、奇跡としかいいようのない番狂わせだった。」というくらいのたいへんな出来事だったのです。
この本の著者は、その当時のことを次のように振り返っています。
「言うまでもなく、学習院大学は、野球の名門大学ではありません。有名な高校球児など一人も入ってこない学校です。
では、そのような学校がなぜ優勝できたのでしょうか。それは、特別なことは何もありません。ただ、ひとつのプレーをおろそかにしない、相手が強大であってもこつこつと戦いを挑んでいく、どんなに劣勢になろうが絶対にあきらめない---そんな当たり前のことを彼らがやってのけたからに過ぎません。」
スポーツをやる人たちにとって、「ひとつひとつのプレーをおろそかにしない」とか、「こつこつと戦いを挑んでいく」、「絶対にあきらめない」などということは、基本的なことです。その基本的なことを一人ひとりが当たり前のようにやったことが、結果として奇跡を起こしたのです。この学習院大学の優勝は、当たり前の事を当たり前に実践することがいかに大切であるかを教えてくれています。
みなさんが1年を振り返るに当たり、最初に言いましたように、授業を静かに受けることができたか、お友達と仲良くすることができたか、規則正しい生活を送ることができたか、などということを反省してみましょう。 こうしたことは小学生として当たり前の事です。そうしたことを自分から当たり前に行うことができたでしょうか。当たり前の事を当たり前にできるようになることが、何よりも大切です。
それでは、冬休みの間、健康に気をつけて、有意義に過ごしてください。1月8日に元気な姿でお会いしましょう。